この国は弱い。
侵略されればまず、勝つことは出来ないだろう。

そう思った政府はまず、志願兵を募った。


結果はゼロ。今まで一度も争いがなかったこの世界で、集まるわけがなかった。

侵略されるかもしれない。
軍があると言っても、警察組織レベル。
それどころか、田舎の駐在さんですらないかもしれない。

政府は焦った。
国を守らなければ。
しかし取り柄は医療技術程度。



この世界の医療技術は他の世界が追随出来ないほどに進んでいた。
四肢を切断するほどの怪我も治せる。
難病も全て完治。
他人と腕を付け変えても動き、癌ですら日帰り入院だ。


その医療技術に目を付けた世界があった。
統一軍。
あらゆる世界を侵略し、全次元統一支配をもくろむ、軍隊にして国家。
とある軍人がこう言った。
「あの世界の医療技術を兵士たちの生産に使おう。他の世界を知らない無知な世界だから、いくらでもやりようがある」
異論を唱える者も無く、この軍人の策は速やかに決行されそして成功した。


――それが、この物語のはじまりになる。